北アイルランド概要



北アイルランドの概要
北アイルランドはアルスターと呼ばれるアイルランド島北東部地方でグレートブリテン連合王国に含まれる。1921年のイギリスーアイルランド条約(Anglo - Irish Treaty)において、アイルランド島の他の26県がアイルランド自由国としてグレートブリテン連合王国から分離した際、連合王国にとどまった6県(アントリム・アーマー・ダウン・ファーマナ・ロンドンデリー・ティローン)。

●面積:14,139I(全島の約6分の1)
●首都:ベルファスト
●気候:温和であるが、偏西風の風下にあるため年降水量は700〜1,250mm。
●地形:アイリッシュ海に面した地域はかつて大地溝帯を形成し、噴火活動を繰り返していた。吹き出した溶岩は氷河によって平らになり、さらに侵食作用で複雑な地質構造をつくり出している。かつての溶岩の吹き出しの割れ目は露出しておよそ40,000もの角柱状の岩となり北の海岸線に幻想的な風景を作り出している(ジャイアンツコーズウェイ)。

●人口:およそ1,686,000人(2001年4月)
ベルファスト/277,000人
ロンドンデリー/98,000人
北アイルランドの人口のおよそ3分の2が16世紀以降イギリスから移住した人々。20世紀中ごろはおよそ3分の2がプロテスタント、3分の1がカトリックであったが、近年はカトリックが増え、統計的にはプロテスタントを上回っている。

 
●祝祭日:
ニューイヤーズデー/1月1日
セントパトリックデー/3月17日
(イースター/春分の日から最初の満月の直後の日曜日)
イースターマンデー/イースター直後の月曜日
メイデーホリデー/5月第一月曜日
スプリングホリデー/5月最終月曜日
オレンジマンズデー/7月12日・13日
サマーホリデー/8月最終月曜日
クリスマス/12月25日
ボクシングデー/12月26日

●北アイルランドの国家:「Londonderry Air」(ロンドンデリーの歌)「ダニーボーイ」のメロディーと同じ。

●北アイルランドの国旗:1953年から1973年まで北アイルランドでは伝統的なアルスター地方の国旗をモチーフにした、赤い十字(英国の国旗であるセントジョージクロス)に赤い手と王冠が描かれた国旗(The Red Hand Flag of Ulster)が使われていたが、統一党支持者や政府支持者の象徴でもあったため用いられなくなくなった、現在は公式の北アイルランド国旗はなく、グレートブリテン連合王国のユニオンジャックが用いられている。

 


政 治
●北アイルランド議会(Northern Ireland Assembly)
北アイルランド議会(ストアモント議会)は1920年のアイルランド政府法令で設立した地方自治議会で、1921年6月7日から1972年3月30日まで行なわれていた*1
しかし1968年から北アイルランドで起こった公民権運動をきっかけに統一党支持者(プロテスタント)と国民党支持者(カトリック)の両過激派グループによる紛争が活発化し、北アイルランド議会では解決に至らないと判断して議会を廃止し、イギリス政府はウエストミンスターから直接統治を行なった。



新北アイルランド議会は1998年4月10日のベルファスト合意(グッドフライデー合意)を受けて設立された*2。新北アイルランド議会では英国ウェストミンスター議会から北アイルランドに委譲された事案(経済発展、教育、環境、社会福祉など) の立法を行ない、委譲されていない事案やグレートブリテン連合王国全体に影響を与えるような外交や防衛問題などを決定することはできない。(これらの事案は英国ウェストミンスター議会の内閣のひとつである北アイルランド国務長官 "Secretary of State for Northern Ireland" が権限を持つ。)
新北アイルランド議会は北アイルランドの複雑な歴史的背景を考慮しながら、各共同体の意見が公平に反映されるように、分断ではなく対話による歩み寄りを意図して執行委員会が組織される。またベルファスト合意によって決定した「北アイルランド−アイルランド評議会」、「イギリス−アイルランド評議会」、「イギリス−アイルランド政府間会議」、「市民フォーラム」の開催を通じて、ベルファスト合意の早期実現をめざしている。

●北アイルランド議会の議員の選出
108の議席がそれぞれ6議席が割り当てられた18の選挙区から選出される。比例代表制(優先順位記述投票/The Single Transferable Vote*3)で選挙は4年ごとに行なわれる。
新アイルランド議会の選挙は1998年6月25日に行なわれた。
選出された議員はまずその中からリーダーとして第一大臣(The First Minister)と副大臣(Deputy First Minister)を選ぶが、第一大臣と副大臣は統一党支持者、国民党支持者の双方からの支持を得て選出されなければならない。また、選挙における獲得議席数の割合によって各党から、「教育」や「環境」などの内閣の大臣10人が選ばれる。これら内閣の大臣と第一大臣と副大臣で執行委員会が組織される。

2003年11月26日に行なわれた議会選挙の各党の獲得議席数:
民主統一党(33議席)、アルスター統一党(24議席)、シンフェーン党(24議席)、社会民主労働党(18議席)、北アイルランド同盟党(6議席)、その他(3議席)

●主な各政党
・民主統一党(Democratic Unionist Party):1970年に設立し、現在、最も得票数の多い政党。イギリスの保守党系で、イギリスの一員としての憲法上の地位の保持を網領に掲げる。
・アルスター統一党(Ulster Unionist Party):2003年の議会解散までは第一政党だった。民主統一党と同じくイギリスの保守党系(穏健派)。
・社会民主労働党(Social Democratic and Labour Party):国民党(Nationalist)の穏健派で第一の政党であったが近年のシンフェーン党の躍進で議席数を減らしている。国民党はアイルランドの統合と独立を政治目標としている。
・シンフェーン党(Sinn Fein):暫定派IRAを支持する人々が結成した政党。1982年に初めて地方議会に選出され、ベルファスト合意以来強硬派路線を緩和し、議席数を増やして2003年から国民党で第一の政党となった。
・北アイルランド同盟党(Alliance Party):カトリックとプロテスタントが一致協力して、福祉や文化、環境など内政に取り組む政党。
*1-正式に1921年6月22日にイギリス国王ジョージ5世の臨席の下で発足。第一回総選挙は1921年5月に行なわれ、以来1972年まで統一党(ユニオニスト)が政権を担当した。(統一党/イギリス連合王国にとどまることを唯一絶対の方針としたプロテスタントの政治組織)



*2-ベルファスト合意は同年5月22日の国民投票の支持を得て1998年の北アイルランド法令(Northern Ireland Act 1998)を通して法律上の権限を与えられた。










*3-優先順位記述投票:
投票者が最も当選させたい候補者から順に1、2、3と記述する投票法。ある候補者が定数以上の得票があった場合その候補者の定数以上の票、またある候補者の得票が極端に少ない場合、それらの候補者の票は第二希望(さらに第三希望)の候補者の票となる。


●英国ウェストミンスター議会の代表
北アイルランドから英国ウェストミンスター議会の下院議員18人の選出の投票も行なう(General Elections)。これら北アイルランド議員は北アイルランドを含むグレートブリテン連合王国全体にかかわる事項の法案の審議を行なう。




社 会
●教育制度
初等、中等、継続教育の三段階で組織され、初等、中等の教育費は国が負担する。義務教育は5才から16才で、初等教育では11才までを教育する。その後、中等教育のグラマースクール/中等学校/技術学校のいずれかに進学
する。グラマースクールは上級学校進学希望者を教育する7年制の学校で生徒は終了時に北アイルランド大学入学資格試験を受ける。中等学校は広範囲にわたるさまざまな教育、技術学校は自然科学や数学などに重点を置く専門教育を行なう。大学は、総合大学2校(ベルファストのクィーンズ大学とアルスター大学)と教員養成大学6校がある。

 
●司法制度
北アイルランドの法廷は上級裁判所(最高裁判所)と下級裁判所から成る。上級裁判所は控訴院(Court of Appeal)と高等裁判所(High Court)から構成され、いずれも民事事件と犯罪事件を扱う。
下級裁判所はおもに民事事件を扱う地方裁判所(County Courts)と軽罪の民事事件と犯罪事件を扱う微罪裁判所(Magistrates' Courts)から構成される。

 
●北アイルランド警察
王立アルスター警察隊(Royal Ulster Constabulary/RUC)は現在およそ8,500人、さらに警察隊をサポートするRUC予備軍(フルタイム:およそ3,200人、パートタイム:およそ1,400人)で構成される。(1995年時点)5,000人の北アイルランド人ユニットを含むおよそ20,000人のイギリス軍である王立アイルランド連隊(The Royal Irish Regiment)が北アイルランド各地に配備されていたが、この数は現在はかなり減り、また今後の北アイルランド情勢によってさらに減らされると予想される。

 


経 済 
主要産業は農牧業が占める。ベルファスト周辺と南西部のアーン川中流では酪農、北西部のフォイル川流域と中部のバン川流域では大麦、シャガイモなどの農業と、肉牛、豚などの酪農、ネイ湖南岸では園芸農業が中心。工業は主にベルファストとデリーに集中し、ベルファストは繊維、造船、デリーは衣料など。

●農業、酪農、漁業:農産物は大麦、エンバク、シャガイモなど、家禽類は牛、豚、羊など。主な輸出向け農作物は肉牛、ベーコン、ハム、卵、乳製品、ジャガイモ、果物、羊毛となっている。また、漁業も盛んで、淡水、海水ともかなりの産額で、サケ、マス、ウナギ、クルマエビ、小ダラ、タラ、ニシンなどが川や近海でとれる。

●観光事業:北アイルランドの観光客数は2003年は、年間およそ194万人で、外国からの観光客は327,000人、そのうち共和国から102,000人、イギリスからは101,000人、北アメリカ54,000人、ヨーロッパからは42,000人。 北アイルランドの治安が回復するに従って観光客数は増加している。

●製造業:主な工業は機械、造船、車両、繊維、食品、飲料とタバコ、衣類。
ベルファストは繊維や食品加工業、またイギリスの産業都市のひとつとして20世紀の前半、ハーランドウォルフ社によるタイタニック号などの造船業で繁栄した。また1939年から45年の第一次世界大戦で北アイルランドはイギリスの主要海上輸送路としてアメリカ軍の上陸地を提供するなど、重要な役割を果たし、戦争物資製造によってさらに繁栄した。
北アイルランドの主要輸入品は工業製品、燃料、工業材料、穀類、タバコ、主要輸出品は織物、船舶、機械、家畜を含む農作物などである。

 





このページのトップに戻る
エールスクエアのホームページに戻る


Copyright 2005 Globe Corporation. All rights reserved.