行政書士 中村としみ事務所
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NO WILL & AGREEMENT

遺産分割協議と必要書類の集め方

※本ページは、当事務所執筆の専門冊子『想いをつなぐ相続と遺言』の13〜16ページおよび21ページの内容を統合してWeb公開したものです。

1. 遺言書がない場合の話し合い(遺産分割協議)

遺言書がない場合には、まず法定相続人を確定し、あわせて被相続人の財産や債務の内容を確認します。そのうえで、相続人全員で遺産の分け方について協議を行います。これを「遺産分割協議」といいます。協議がまとまった場合は、その内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめ、相続人全員が署名・押印し、印鑑登録証明書を添付して作成します。この協議書には法的な効力があり、あとから一方的に内容を変更することはできません。変更するには、再度相続人全員の合意が必要となります。遺産分割協議書は、不動産の相続登記や預貯金の払い戻しなど、各種手続きにおいて必要となる重要な書類です。なお、相続人間で協議が整わない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることにより、遺産分割の方法が決定されます。

遺産分割協議は、原則として相続人全員がそろって行う必要があります。たとえば、相続人の中に海外に住んでいる方、判断能力に不安のある方、行方がわからない方、あるいは未成年の方がいる場合でも、その人を除いて話し合いを進めてしまうと、その合意は無効とされる可能性があるため注意が必要です。正式な手続きを経ずに協議を進めると、後になって「その話し合いは無効だ」と主張され、相続手続きが複雑になる恐れがあります。そのため、話し合いへの参加が難しい相続人がいる場合には、代理人を立てたり、家庭裁判所の手続きを利用したりして、全員が適切に関われる方法を整えることが大切です。

【実務解説】相続人ごとの対応方法

相続人が海外に住んでいる場合

遺産分割協議にはメールや電話などで意向を伝えることも可能です。協議書を正式な書類として扱うには、遺産分割協議書を郵送し、海外の日本大使館や領事館で「サイン証明書(署名の証明)」を取得してもらう必要があります。これにより、協議への同意が証明され、その後の手続きに使用できるようになります。

相続人が認知症などで判断能力が不十分な場合

相続人ご本人様が、自らの意思で協議に参加できるかどうかが重要です。軽度であれば、医師の診断により協議に参加できると判断されることもあります。判断能力が不十分とされた場合は、家庭裁判所に申立てをして「成年後見制度」を利用し、選任された成年後見人が代わりに手続きを行います。

相続人が行方不明の場合

まず、戸籍の附票を取り寄せ、最新の住所を確認します。住所が特定できない場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てます。管理人は、裁判所の許可を得たうえで協議に参加し、行方不明の相続人に代わって財産を保護します。

相続人が未成年の場合

原則として、親が代理で協議に参加することはできません(親も相続人である場合、子どもと利害が対立するため、親が子どもの代理人になると、公平な話し合いができないおそれがあるからです)。家庭裁判所に申立てを行い、親以外の人(おじ・おばなど)を「特別代理人」として選任してもらいます。(未成年の子が複数いる場合、それぞれ別の特別代理人を選任してもらう必要があります。)

▶▶ 特別受益(とくべつじゅえき)

相続では、すべての相続人に公平に財産を受け取る権利があり、基本的には法律で定められた割合(法定相続分)に従って遺産を分配します。ただし、被相続人から生前に、結婚資金や住宅購入資金など特別な援助や贈与を受けた相続人がいる場合、そのまま均等に分けると不公平になることがあります。このような生前の援助や贈与は「特別受益」と呼ばれ、遺産の配分を考えるうえで重要な要素となります。特別受益を考慮せずに遺産を取り決めてしまうと、他の相続人に不満が生じ、相続をめぐる争いに発展するおそれもあります。円満な相続を実現するためには、相続人同士で特別受益の有無や影響についてしっかり話し合い、全員が納得できる形で遺産を分割することが大切です。

2. 遺産分割協議書の作成と記入見本

話し合いで決まった内容は、後々のトラブルを防ぐため、また銀行での払い戻しや不動産の登記手続きを行うための証明書として、必ず「遺産分割協議書」という書面に残します。ここには「誰がどの財産をどれだけ引き継ぐか」を明確に記載し、相続人全員が自署し、実印(印鑑登録されたハンコ)を押印します。

【書式見本】遺産分割協議書

遺産分割協議書の書き方見本

※不動産は登記簿通りの表記、預貯金は銀行名や口座番号を正確に記載します。

3. 相続関係説明図と法定相続情報一覧図

遺産分割協議がまとまり、相続人全員の合意が得られたあとは、不動産の名義変更(相続登記)や銀行預金の払い戻しなど、具体的な相続手続きを進めていきます。これらの手続きを行うには、すでに収集した被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本などを使用し、各種の申請書類を整えていきます。手続きをよりスムーズに進めるためには、「相続関係説明図」や「法定相続情報一覧図」などの資料を作成しておくと有効です。これらの書類をあらかじめ用意しておくことで、相続人同士の関係がひと目で把握でき、役所や金融機関での各種手続きも効率的に進めることができます。

【書式見本】相続関係説明図

相続関係説明図の見本
■ 相続関係説明図
・相続人同士のつながりを、戸籍をもとに作成する家系図のような表にまとめたものです。
・書き方に厳格な決まりはなく、自由に作成できます。
・主に、不動産の名義変更(相続登記)の際に、相続人の関係を示す補助資料として利用されます。

【書式見本】法定相続情報一覧図

法定相続情報一覧図の見本
■ 法定相続情報一覧図
・上記の相続関係説明図をもとに、戸籍謄本などの書類とあわせて法務局に提出する正式な書類です。
・被相続人の氏名や死亡日、相続人の氏名・生年月日・続柄などを、所定の様式に従って正確に記載します。
・法務局での手続きを経て受理されると、「法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。
※この写しは公的な証明書として活用でき、たとえば銀行の預金解約や不動産の名義変更など、複数の相続手続きにおいて戸籍謄本の提出を省略できるため事務の効率化に役立ちます。

📋 法定相続情報一覧図の申出(手続き)に関する基本情報
法定相続情報一覧図を取得する場合の必要書類
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等(戸籍・除籍・改製原戸籍)
  • 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
  • 相続人全員の戸籍謄本(または戸籍抄本)
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本または抄本
  • 申出人の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
  • (住所を記載する場合)相続人全員の住民票
  • 法定相続情報一覧図(ご自身で作成します)
  • 申出書(法務局ホームページからダウンロードできます)
申請場所 被相続人の最後の住所地などの法務局
法定相続情報一覧図の利用範囲

以下のいずれかの地を管轄する法務局(登記所)を選択して申し出ます。

  • 不動産の名義変更
  • 預貯金の名義変更、解約
  • 株式、投資信託などの名義変更
  • 自動車の名義変更手続
  • 相続税申告、納税
  • 年金等手続・保険金の請求
交付手数料 無料(何枚でも無料で発行・交付されます)

4. 必要書類:被相続人の戸籍の集め方

すべての相続手続きにおいて、基礎となるのが「相続人の確定」です。そのために、被相続人の「出生から死亡まで」のすべての戸籍・除籍・改製原戸籍を遡って取得しなければなりません。人が亡くなると、その方のこれまでの婚姻、転籍、法改正による書き換えなどの歴史を全て裏付ける必要があるため、本籍地を何度も変更している場合は、全国のそれぞれの自治体へ請求を行う必要があり、これが大変な労力となります。

1. 戸籍謄本(こせきとうほん)・除籍謄本(じょせきとうほん)・改製原戸籍謄本(かいせいはらこせきとうほん)

  • 戸籍謄本:現在の戸籍に記載されている全員の情報です。(戸籍全部事項証明書)。
  • 除籍謄本:亡くなった方や婚姻などで戸籍から除かれた方の情報です。
  • 改製原戸籍謄本:戸籍の様式が変更される前の古い戸籍です。平成6年(1994年)以前は縦書き・手書きのものがあります。

2. 広域交付制度

令和6年(2024年)3月1日から始まった制度です。本籍地以外の市区町村でも、戸籍・除籍・改製原戸籍を取得できるようになりました。

💡 広域交付制度を利用すると、本籍地が遠方でも、お住まいの市区町村で必要な戸籍をまとめて取得できます。
請求できる人 取得場所 必要なもの
本人、配偶者、父母・祖父母(直系尊属)、子・孫(直系卑属)に限られます。
※兄弟姉妹などの戸籍は広域交付の対象外です。
請求者本人が直接窓口に出向く必要があります。郵送や代理人(委任状を使った請求)はできません。
  • 申請書(市区町村役所の窓口にあります。)
  • 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど顔写真付きの公的本人確認書類)
  • 筆頭者の氏名や本籍地
  • 手数料
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